ニコチン依存症から回復したアキさんの話

吸い始めたのは高2のとき
 初めて吸ったのは、高校2年のときだった。友だちの部屋で4、5人で話していたら、他のみんなが吸い出したので、自分も吸わないと子どもっぽくみられそうな気がして、無理して吸った。
 背伸びをしたい思春期。何となくかっこいい気がして、親に隠れてたばこを吸うようになった。
たばこは「頼もしい友人」だった。でも……
 大学に入ったら、18歳なのに、もはやだれもとがめない。下宿の畳を焦がす回数を重ねるにつれ、本数も増えていった。
 いろんなことに自信がなかった。人の目を見て話すのには、とても勇気がいった。そんな時に、たばこは頼もしい友人だった。他人と話す緊張をかくすとき、何かを集中して考えるとき、気分がいいとき、読書をするとき、いつもたばこを吸っていた。たばこが吸えないと、そわそわして落ち着かなかった。   
 体に悪いとはわかっていたけれど、若くて健康な間はなかなか実感できない。「このままじゃまずい」と思い始めたのは、30代後半になってから。趣味の草野球で、わずかな距離を走るだけで息切れするようになった。二塁打なんて打つと、全身でぜいぜいとあえぐほど苦しくなった。そのころには、1日3,4箱のヘビースモーカーになっていた。
使ったお金はざっと500万! 
 40歳になって、ようやくたばこを卒業できた。22年間吸い続けて、たばこに使ったお金は、ざっと500万円ぐらいになる。こんな大金をかけて、ニコチン依存症になり、周囲に有害な煙をまきちらしていたのだ。
 禁煙して4日目、全身がガタガタふるえるような激しいふるえにおそわれた。長そでの下着に冬物のパジャマを着て、布団をかぶっても、ふるえがとまらない。40度を超える原因不明の発熱だった。長い間たばこの有害物質と戦っていた私の体が、突然の終戦にびっくりしたのだろう。翌朝になると、熱はすっかりひいて、すがすがしい気分だった。
 禁煙して1週間ほどたつと、たばこを吸えないさみしさを強烈に感じるようになった。さみしさをうめるため、いつも口に何かを入れた。キャンデー、ガム、昆布、ウーロン茶、水……。これは2ヵ月以上続き、禁煙を続ける助けになったが、5キロの体重増加をまねいてしまった。これほどまでに、私の心と体はたばこに支配されていたのだ。
手を出さないのが一番いい 
 たばこって全然かっこよくないし、吸ったからって女性にもてるわけでもない。それなのに、いったん習慣になると、愛着がわいて、そこから抜け出すのはかなり大変だ。たばこには手を出さないのが一番いい。好奇心で吸っても、早めにやめるのがかしこい選択だ。