nitanai/22歳男性

なぜシンナー少年たちはシンナーを吸うのかわかりません。
私自身、塗装作業を実家でやっていて(もちろんシンナーの蒸気を吸うことになりました)、気分が悪くなった経験があるのですが、なぜ彼らは臭くて気分が悪くなるものを吸うのです。


【回答】めば
nitanai様。お返事が遅れ、失礼しました。
わたしは、子どもの頃から石油っぽい匂いが好きでした。
ペイント・マーカーやマニキュアの甘い匂いを嗅いだだけで、マタタビにじゃれつく猫のように、とろけそうな気分になるのです。
食べ物や飲み物、香水に対して好き嫌いがあるように、シンナーのあの匂いが好きな人もいれば、nitanai様のように、あんな臭いものと感じる人もおり、これは生まれつきの嗜好のような気がします。
なぜ、気持ちいいと感じたものを繰り返し摂取し依存していく対象が、人によって異なるのでしょうか?
また一方で、シンナーの匂いは嫌いだと言いながら、吸い続けているうちにシンナーの依存症になり、最初は不快感を覚えながらも吸い続けるうちに虜になっていくタイプの人もいます。
ビールをはじめて飲んだ時、こんな苦いものどこが美味しいんだろうと感じた人が、ひと夏飲み続けているうちに、この苦味がいいんだと思い込むようになるのとどこか似ていますよね。
これはどうも脳の中の報酬系とよばれる快感中枢の構造に起因しているようです。
専門家の文章から少し引用してみましょう。
「――(報酬系)というのはどういうことでしょうか。子どもが何か良いことをするとご褒美をもらいます。そうするとその子は、また次のご褒美をもらえるようにと、また同じことをやるようになります。これと同じシステムが脳の中にあるのです。良いことをした人には、快感という神様からのプレゼントが与えられるのです。この場合『良いこと』と言うのはどういうことでしょう。おいしいものを食べて自分の健康を維持するための栄養を効果的に摂るとか、セックスをして子孫を残す努力をするといったことです。数千年前まで人類が自然の中で生きていた時代には、この報酬を得るために努力しさえすれば、それだけでたくましく生きていけたわけです。しかし、文明はあらゆる生態系を破壊してきましたが、そのなかでこの報酬系をめぐる生態系もおかしくなってきました。人類が発見し、創り出した依存性薬物と呼ばれる物質、人の体の中に入ると、この人間の脳の報酬系を強烈に刺激します。ご褒美をもらった子供たちが、またご褒美をもらえるように行動するのと同じように、報酬系を刺激する薬物を、人間はまた使おうとします。このような、ある薬を使えば使うほど、より薬が使いたくなる作用を『報酬系強化作用』と言い、それが依存性薬物の最も重要な性質なのですが、これは脳の働きと不可分に結びついているのです。・・・・(略)・・・・乱用薬物にもいろいろありますし、同じ薬物を使っても依存症になる人、ならない人がいます。デュポンさんはこれらのことにも言及しています。これはおおざっぱで、全体としては仮説の段階にあることですが、わかりやすい書き方をしているので、その部分を引用します。『脳の報酬コントロール・ルーム(報酬系)には、いろんな入り口がある。食物やセックスという自然の入り口もあれば、アルコールや薬物といった科学物質の入り口もある。それぞれの入り口の大きさは、人によって異なっている。このために、ある人はアルコールを飲み、好きになるが、飲んでも好きになれない人もいる。好きになる人はアルコールから報酬系への大きな入り口を持ち、好きになれない人は小さな入り口しか持たない。この入り口の大小や、開いているのか、閉じているのかということは、ある程度、遺伝的に決まっている。また、大きな入り口を持った人はもちろん、小さな入り口しか持たない人でも、十分に報酬の経験を積み重ねれば、アルコールや薬物の依存症になるし、他の行動の依存症にもなる(R.L.Dupont,The Selfish Brain,Hazelden,1997)』」
薬物依存と司法 連続講座「薬物依存の理解とその治療」麻生克郎 復光会垂水病院副院長冊子「薬物依存者に、処罰よりも希望を『司法と薬物』を考える」監修 フリーダムより